手のひらの蝶



忘れるために飛ぶのは鳥だ
真っ白い翼を持つ者は
高く青い空で
強い光に包まれる

それは思いを失うことに似ている
全てを消してしまうことに似ている
忘れるための儀式だと感じる


僕の知る小さな空には
手のひらの蝶が舞う
陽だまりと同じ色をした者が
ひらりひらり

指先を捧げたいと手を伸ばす
触れて震えて泣きたいと望む

それは君を愛することに似ている
君を欲しがることに似ている


窓に切り取られた空の向こうに君がいる
そう思うだけで
泣き出してしまいたくなる


ある日 手のひらの蝶に 夢を見る



2007.5.29 晴れ