冷蔵庫

真夜中の午前2時
白い箱の扉を開けると
僕はすっと奥に手を差し伸べる
探って探って
やっと掴んだ
細くて白い手首

淡い光が暗闇にこぼれ出る
白いつま先がフローリングに触れる
嗚呼、天使が舞い降りたよ

物語の続きをせがむ君は
僕だけの夜の秘密
ありきたりな僕の言葉に微笑みながら
冷たい体を僕に寄せる

ねえ、こんな空想
君にしか話さないよ
だからほら
夜明け前には帰らないと
君は朝の光に消えてしまうかもしれない

白い箱の扉をあけ
君の背中をそっと押す
さりげなく翼の羽をひとつ抜き取って
握りしめたまま
「おやすみなさい」



眩しい光の中目覚めると
僕の手のひらは泪で濡れていた

2008.5.22