悲しみの音

あなたの足音がしました
そっと背中が冷たくなり
それから額に汗がにじみました

貴方の吐息が間近で揺れました
それはあまりにも優美で妖艶で
そして残酷でした

明け方
さみしい空にまだ白い月が残っていました
小学生のころに見た
乾いたグラウンドの上に広がる
青空に浮かんでいた真昼の月
あの日から随分と来てしまった
そう思っているのは自分だけ

悲しみの音が
薄汚れたアパートの階段を
転がり落ちてゆきました

それから僕はどうしたの?

あなたの足もとに転がり落ちた音は
やがてあなたの足音と一緒になった

遠ざかって
消えそうなほど遠ざかって

まだ僕の中で木霊している

2009.1.15