復活の呪文



覚えたての言葉が 君のうなじを滑り落ちて
戸惑い震えて 小さくなって消えた
微笑む君に抱きしめられた僕は
ただただ怯えるばかりで
世界の全てを君の目で覗こうとしていた
君の両手についた全ての指で
生きてゆく術を得ようとしていた
泪の止まらない日は優しくして欲しくて
真っ暗な夜は傍にいて欲しくて

君以外何もなくて 君以外何もいらなくて

ある雨の日 ぴくりとも動かない君の躰が
ゆっくりゆっくり色を失っていくのを見つめながら
僕は君の唇に あの日君が僕に教えてくれた言葉を
何度も何度も重ねたけれど
泪を止める優しさはやってこなかった

2007.9.7 晴れ